ちょっと変わったご当地そば5選/ホームメイト
日本各地には、その土地ならではのそばがあります。山形の「冷たい肉そば」は、鶏肉と常温の出汁が特徴。また、「越前おろしそば」は、たっぷりの大根おろしでいただく福井の郷土料理です。他にも、京都や北海道に伝わる、身欠きにしん(にしんの干物)の甘露煮をのせた「にしんそば」、抹茶の風味と色合いを楽しめる京都の「茶そば」、熱した瓦の上で茶そばを焼き上げる山口の「瓦そば」などがあり、地元の人々に親しまれるだけでなく、ご当地そばを目当てにその土地に足を運ぶ方も少なくありません。これらのご当地そばは、地域の歴史や風土を反映した食文化であり、観光資源としての価値や土地活用の視点からも注目されているのです。各地域の知恵と工夫が光る、個性豊かなご当地そばを紹介します。
冷たい肉そば(山形県)

冷たい肉そばは、山形県河北町谷地の郷土料理です。鶏骨出汁の冷たいつゆと、コリコリとした食感の親鶏肉を使用するのが特徴で、「冷たい」と言っても氷は使わず、常温で提供。起源は明確ではありませんが、山形県河北町谷地地区が発祥と言われています。
冷たい肉そばは、2011年(平成23年)の「B-1グランプリ」(B級ご当地グルメの日本一を決める、まちおこしイベント)への出展を機に、全国的に知名度が上昇。2018年(平成30年)には、PR大使を務める山形県出身の演歌歌手「最上川司」(もがみがわつかさ)さんが歌う「司の冷たい肉そば音頭」が発売され、土産用の商品も開発されました。
現在、河北町内では13店舗が冷たい肉そばを提供しており、「谷地の肉そば会」として伝統の味を守り続けています。2010年代からは仙台市中心部にも出店が進み、独自のアレンジメニューも誕生。地元では寒い冬でも8~9割の客が注文する人気メニューです。
越前おろしそば(福井県)

「越前おろしそば」は、福井県嶺北地方の郷土料理で、2007年(平成19年)には、農山漁村の郷土料理百選に選定されました。約400年前、「越前府中城」の城主「本多富正」(ほんだとみまさ)が、京都・伏見からそば職人「金子権左衛門」(かねこごんざえもん)を連れてきたことが、越前おろしそばの始まりとされています。
大きな特徴は、大根おろしを薬味だけでなく出汁として使用する点です。注文を受けてから大根をすりおろし、部位によって辛味を調整するなど、店舗ごとのこだわりも見られます。また、そば殻まで挽き込んだ「挽きぐるみ」を使用するため風味が強く、麺が黒っぽいのも特徴です。
食べ方は、冷たい大根おろしの出汁をかける「ぶっかけ」や「みぞれ」、大根のしぼり汁に生醤油や出汁を加えたつけだれで食べる「しぼり」や「おしぼり」などが一般的。薬味には大根おろしのほか、刻みネギ、かつお節、刻み海苔などを使用します。
なお、越前そばという名称は、1947年(昭和22年)の124代「昭和天皇」の来県がきっかけです。現在は十割そばを提供する店舗や、太麺と細麺の2種類を用意する店舗も増え、多様な発展を遂げています。
にしんそば(北海道・京都府)

にしんそばは、かけそばに身欠きにしんの甘露煮をのせた料理で、北海道と京都府を代表する名物料理です。江戸時代、北海道で水揚げされたにしんは身欠きにしんに加工され、北前船で本州へ運ばれていました。
北海道のにしんそばは、濃口醤油を使った濃い色の出汁が特徴で、白ネギを使用。江差町(えさしちょう)には、200年の歴史を持つ豪商「横山家」伝来のレシピがあり、この地での元祖と言われています。留萌市(るもいし)や小樽市でも、独自のアレンジを加えた郷土料理として親しまれてきました。
一方、京都のにしんそばは、1882年(明治15年)、そば店・松葉の二代目「松野与三吉」(まつのよさきち)が考案したのが始まり。淡口醤油と昆布出汁を使用し、九条ネギを添えるのが特徴です。温かいそばだけでなく、冷やしにしんそばも提供されています。
にしんの漁獲量は昭和30年代から急激に減少しましたが、にしんそばは、全盛期の名残から、現在も広く親しまれる一品です。2014年(平成26年)にはカップ麺としても商品化され、全国的な知名度を獲得しています。
茶そば(京都府)

茶そばは、そば粉に抹茶を練り込んだ変わりそばの一種で、特に京都府宇治市と静岡県で名物料理として知られています。そば本来の風味に加え、抹茶の香りと鮮やかな緑色が特徴です。
このような変わりそばは、江戸時代中期から考案され始め、1749年(寛延2年)に刊行された料理書「料理山海郷」(りょうりさんかいきょう)には、そば粉に卵を練り込んだ「玉子蕎麦切」(たまごそばきり)が記されています。茶そばは、三色そばや五色そばの「緑」を担う重要な存在でした。
茶そばは、ゆで上げたあとに水洗いし、再度湯通しする「熱もり」(あつもり)でいただくのが伝統的な食べ方。これにより、お茶とそばの香りが際立つとされています。一方、山口県では、独自の発展を遂げた瓦そばが有名。茶そばを熱した瓦の上で焼き、温かいめんつゆでいただく郷土料理です。
現在は、各店がそば粉と小麦粉の配合率や抹茶の選定にこだわり、工夫を凝らして茶そばを提供しています。つゆに浸けずに抹茶の香りを楽しんだあと、つゆと共に味わうのがおすすめです。
瓦そば(山口県)

瓦そばは、山口県下関市豊浦町の川棚温泉(かわたなおんせん)を発祥とする郷土料理です。
約300度に熱した専用の瓦の上に茶そばを敷き、錦糸卵と細切れの牛肉をのせ、温かいめんつゆでいただきます。薬味は、小ネギ、海苔、レモン、もみじおろしなど。茶そばは瓦の熱で上層がモチモチ、下層がカリカリとなり、食感の変化を楽しめるのが魅力です。
瓦そばは当初、川棚温泉の旅館の名物料理でしたが、その後、山口県全域に広がり、現在は県外でも提供されています。県内のスーパーでは、「瓦そばセット」として茶そばとつゆのセットが販売され、瓦の代わりにホットプレートやフライパンを使用して楽しむことも可能。お店では、1枚の瓦に2~3人前を盛り付けて提供するのが一般的で、宴会料理のシメとしても親しまれています。

