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上質なコーヒーと安らぎの空間を提供してくれる「カフェ」。今回はコーヒーが自慢のカフェを訪れ、個性溢れるカフェオーナーの方々にお話を伺いました。魅力的なカフェオーナー達が語るそれぞれの人生に、ぜひ触れてみて下さい。

岸ゆうなと岸ゆづる
国内最大級の飲食店情報サイト「クックドア」

記事

【グルコック】

カフェオーナー人物伝 深煎り人生が香るコーヒー物語

「宮田コーヒー」宮田喜夫さん,「TASTORY COFFEE AND ROASTER」杉江美奈子さん,「隠れ家ギャラリー えん」服部浩太郎さん

書店の店頭に個性的なカフェを特集した「カフェ本」が平積みされている昨今。全国各地のカフェを巡る旅を楽しむ人も増えているようです。

なぜ人はカフェという場所に集うのでしょうか。居心地の良いカフェの秘密を探っていくと、コーヒーの淹れ方からインテリアまでオーナーそれぞれの“人生”が流れていることに気づきます。

魅力的なオーナーが営むカフェでは、個性的でおいしいコーヒーに出会えるものです。常連さんに愛され、ご近所の方々から親しまれている3件のカフェを訪ね、それぞれのオーナーさんの人生の一端をのぞいてみましょう。

宮田コーヒー 元エンジニアが淹れる濃密マンデリン

宮田コーヒー_看板
宮田コーヒー_外観

大手部品メーカーのエンジニアからの転身

コーヒーにハマってしまう人には、思いのほか理系の人が多いと聞きます。味わう時には文学や音楽を楽しむのと同様の感性が働きますが、コーヒーの味を追求していくプロセスは理科の実験に似ていたり、時には数学的だったりするからなのかも知れません。

宮田コーヒー_宮田さん
宮田コーヒー_内観

名古屋市千種区の閑静な住宅街にひっそりと佇む「宮田コーヒー」のオーナー、宮田喜夫さんも理系出身オーナーのひとり。長年、大手部品メーカーでエンジニアとして活躍していた人です。

宮田さんがカフェオーナーをめざすようになったのは、定年退職を迎える数年前のこと。仕事を続けながらプロ向けのコーヒースクールに通い、修行を積んだそうです。そして、ある程度自信が持てる段階になった時、一念発起して名古屋のテレビ塔近くで土日限定のカフェ「土日屋」を開いて腕試し。その後、現在の場所で「宮田コーヒー」をオープンさせました。

宮田コーヒーは、土曜日から火曜日14〜18時だけオープンの実にマイペースなカフェです。常連さん曰く、「その“ゆるさ”が、常連さんの居心地の良さにつながっている」。

宮田さんにオープンに至るまでの人生をうかがうと、会社では機械部品の設計・開発に携わり、「非常に厳しい日々を送っていた」とのこと。「設計・開発のスケジュールが途切れることはなく、海外出張もよくありました。プレッシャーの余り、心を病んでしまう同僚も結構いたなぁ…」と振り返ります。

「できる限り、嫌なことはしないぞ」と決意したのは、定年後のことを考えていた時のことでした。そんな人生が送れたら…などと、少々うらやましい感じもしますが、これは“嫌なこと”でも精一杯がんばった人にだけ与えられる勲章です。「で、大好きなコーヒーを本格的に始めることにしたんです」。

最初はコーヒーが苦手だった!?

宮田コーヒー_ドリップする宮田さん

なぜ、第2の人生の目的地がコーヒーだったのでしょうか? 宮田さんとコーヒーとの出会いについて聞くと、意外な答えが返ってきました。

「もともと僕は、コーヒーが苦手だったんですよ」後ほど登場する「TASTORY COFFEE AND ROASTER」のオーナーさんもそうですが、ある日突然コーヒーのおいしさに目覚めたというカフェオーナーもまた、案外多いのです。宮田さんがコーヒーに目覚めたのは学生時代のことでした。

「ある冬の寒い夜、大学の研究室で実験を終えて下宿へ帰る途中のことです。あまりにも寒くて、飛び込んだのが1軒の喫茶店でした。その店がコーヒー専門店だったと気づいた時には“しまった!”と思いましたが、仕方なくコーヒーを注文して飲んだら、これがおいしくってね…。コーヒーってこんなにおいしいものだったんだと、はじめて知りました」

その後の宮田さんが大のコーヒー好きになっていったのは言うまでもありません。「今でも学生時代の友達を思い出すと、アイツはミルクと砂糖を入れていたとか、ガブガブとブラックを飲んでいたとか、コーヒーを飲んでいる光景が浮かんでくるんです。その頃から人並み以上にコーヒーへの関心が高かったのかな」

宮田コーヒーへの道は、すでに学生時代から始まっていたようです。

珠玉の1杯はネルドリップのマンデリン

カウンターの横にはモダンジャズの帝王と呼ばれたマイルス・デイビスの写真が飾られ、静かにジャズが流れる宮田コーヒーは、ご近所の会社経営者や犬の散歩帰りの人びとがフラッと立ち寄りたくなる癒しのスポットとして愛されています。

建物やインテリアは一級建築士である宮田さんの奥様が手がけたもので、スッキリとした印象でまとめられ、飄々とした主の人柄にぴったりです。エントランス横に設えたオープンデッキでは、犬と一緒にコーヒーを楽しむことも可能です。

「ウォン、ウォン」と太い鳴き声で出迎えてくれる看板犬、ブラックラブラドールのマックゴマに会いに来る人も多いと言います。束の間、自然体に戻れる場所—宮田コーヒーはそんな空間です。

宮田コーヒー_ドリップ中

お客様にぜひ飲んで欲しいコーヒーは?と聞いてみました。答えの代わりに出してくれたのは、ネルドリップで淹れた1杯でした。

「65℃のお湯で淹れたマンデリンです。豆は通常の2倍の量を使用しています」これはガツンと来そうだなと、ちょっと覚悟しながらひと口。ところが、口の中に広がったのはチョコレートにも似たまろやかさでした。

濃厚だけれど後味はすっきり。他ではなかなか出会えないこの味わいは、何度も試行錯誤しながら辿りついた宮田さんだけのもの。

お店のHPに必ず掲載される宮田さんのメッセージも秀逸です。ここは、愛すべき脱力の聖地。ちょっと疲れた日の午後は、宮田さんのマンデリンを飲みながら寛いでみてはいかがでしょう。

【施設情報】

TASTORY COFFEE AND ROASTER 元コピーライターが焙煎するストーリーのあるコーヒー

TASTORY COFFEE_杉江さん

このままでいいのかな?が原動力に

岐阜県大垣市で見つけたのは、笑顔が素敵な女性、杉江美奈子さんが2015年にオープンしたおしゃれなビーンズショップ。コーヒーの焙煎機が置かれた店内は、映画「かめも食堂」を彷彿とさせる優しい雰囲気で、壁には親友の写真家・林直美さんの作品が飾られています。

TASTORY COFFEE_焙煎機
TASTORY COFFEE_焙煎具合を確認する杉江さん

以前は名古屋市内の制作プロダクションに勤め、コピーライターとして活躍していた杉江さんがコーヒーに魅せられたのは、数年前のある日。コーヒー好きな先輩が連れて行ってくれた喫茶店でのことでした。実は、杉江さんも前出の宮田さんと同様に、もともとはコーヒーが苦手だったとのこと。

「その時のコーヒーがとにかくおいしくって、目からウロコが落ちたような気分でした。その後は自宅でもコーヒーを楽しむようになり、豆のことや抽出法を調べるに連れ、どんどん深みはハマってしまったんです」

杉江さんがいわゆる“アラフォー世代”を迎えた時期のエピソードです。その頃は「このままでいいのかな?」という漠然とした不安もあったそうですが、その不安が杉江さんの背中を押すチカラになったとも。

東京、大阪、神戸など各地の有名なコーヒー専門店やビーンズショップ、また名古屋のビーンズショップが主催するコーヒー勉強会に参加するなど、どこへでも飛んでいったそうです。

自ら手がける焙煎で“コーヒーの物語”を伝えたい

TASTORY COFFEE_自慢の豆がずらり
TASTORY COFFEE_自慢の豆

店名にある「TASTORY」は、「TASTE」「STORY」を合わせた杉江さんの造語です。「私が焙煎したコーヒーからいろいろな物語が生まれるといいな、と思って…。キャッチコピーやネーミングを考える仕事が役に立ちましたね」と笑います。

シングルオリジンと呼ばれる1種類の豆で淹れたコーヒーを楽しむこともできますが、杉江さんがアレンジした3種類のブレンドコーヒーも絶品。それぞれに付けられた素敵な名前も、もちろん杉江さんが考えたものです。

ブレンドコーヒーの1つめは、一日の始まりにふさわしい「グッディ・ブレンド」、2つめは午後のコーヒータイムにおしゃべりが弾みそうな「テーブルトーク・ブレンド」、そして3つめは夕食後に味わいたい「スロータイム・ブレンド」です。自宅に3種類とも揃えて飲み比べたくなりませんか?

コーヒー豆を購入する際には試飲も可能とのこと。子育て中のママにも安心なカフェインレスのコーヒーも購入可能。杉江さんの優しさがあふれるカフェを覗いてみませんか。

【施設情報】

隠れ家ギャラリー えん コーヒーよろず相談所のような古民家カフェ

えん_外観
えん_服部さん

店名の通り、始めて訪れる人はつい見過ごしてしまいそうになる隠れ家カフェ名古屋市南区にあります。実際、筆者も最初に伺った時にはすぐ辿り着くことができず、ご近所の方に聞いたらさっき通り過ぎた場所にあることがわかったという次第です。

ようやく見つけて、生け垣に囲まれた路地を進むとそこには別世界が広がっていました。玄関には子どもから大人まで、大小さまざまな靴が並び、田舎の親戚の家を訪れた時のようです。サザエさんの家に似ているかも…と思っていたら、カツオ君とワカメちゃんのように元気な子ども達が出迎えてくれました。

この2人のパパが「隠れ家ギャラリー えん」のオーナー、服部浩太郎さんです。とはいえ、風貌は波平さんとは大違い。“お兄さん”と呼んだほうが似合いそうです。

建築学のイタリア研修で出会ったエスプレッソ

えん_エスプレッソマシン

服部さんの存在を教えてくれたのは、最初に登場した宮田さん。「あの人はすごい勉強家でコーヒーのことなら何でも知っている。心底から焙煎が好きなんだね」と、しきりに感心していたのでどうしても会ってみたくなり取材をお願いしたのです。

聞けば服部さんも理系の人。学生時代は建築を専攻していたそうです。幼いころはコーヒー牛乳が大好きで、物心ついたころには時々コーヒーを飲む程度だったとのこと。「といっても、インスタントコーヒーでしたけれど…」

コーヒーと服部さんの衝撃的な出会いは、大学生になってからのことでした。「建築の研修旅行で訪れたイタリアエスプレッソを飲んだんです。そうしたら、世の中にこんなにおいしいコーヒーがあったのかって驚いてしまって…。日本にはまだエスプレッソマシンが普及しておらず、本物のエスプレッソにはなかなか出会えなかった時代のことです」

就職を間近に控え、服部さんは悩みます。建築の道か、それともコーヒーか…。考え抜いた末に焙煎を手がけているカフェへ就職したのです。

えん_内観

そこで焙煎の修行をし、そろそろ独立しようかと思っていた時に友人から「空いている築80年の古民家があるのだけれど、何かに使えないだろうか」と相談を持ちかけられたのです。

「建物を見て一目惚れでした。それまでは自分のカフェは白い壁にしようとか、北欧風がいいかな、なんて考えていましたが、一気に路線変更です」その時は倉庫として使われていた古民家でしたが、建築を学んだ服部さんの手でカフェに変身し、息を吹き返しました。

「とても広かったので、空きスペースをギャラリーとして使うことにして、2階は趣味のお稽古イベントの会場として貸し出しています」

えん_豆の香りを確認できます

服部さんの仕事場であるカウンターの中では、エスプレッソマシンが燦然と輝いています。ほかにも常時10種類程度のシングルオリジンブレンドコーヒーが用意され、ランチやデザートも楽しめます。

座敷があるので子ども連れのお客様でも安心して寛いでいただけます。椅子席だとずっと子どもを見守っていないといけませんからね。自分に子どもが出来てから、改めてここを選んで良かったと思っています」

ちなみに服部さんが奥様と出会ったのは、最初に就職したカフェ。きっと運命に導かれてカフェの道へと進んだのでしょう。

1つの町に1軒のカフェを

えん_ドリップ中

開店前、閉店後の時間を使って焙煎も手がけている服部さんは、20箇所ほどのカフェに豆を卸しています。コーヒーの淹れ方にも詳しく、お客様の好みに合わせてペーパードリップフレンチプレスなどを駆使して最高の状態のコーヒーを提供してくれます。

自慢のコーヒーは?と聞くと、「全部!」と少し照れながら答えてくれました。そして、「どれひとつとして手を抜いたものはありません」と続け、これからの夢についても明確なイメージを語ってくれました。

喫茶店文化が根付いている名古屋なのですから、すべての町内に1軒はおいしいコーヒーを飲ませてくれるカフェがある…そんな未来をイメージしています。建築を学んだこともあって町づくりにも興味があるんです。なので、町のコミュニティースペースとしてカフェが活躍するような名古屋になるようがんばりたいですね」

えん_内観

服部さんはプロ向けのコーヒー教室も開催している。何かコーヒーのことで知りたいことがあったら「隠れ家ギャラリー えん」へ。服部さんからきっと明快な答えが返ってくるはずです。

【施設情報】

ライタープロフィール

杉山佳栄子
飲食・旅情報からペットの飼い方まで、暮らしを楽しむための情報を発信する生活提案型ライター。

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